基礎になる知識から積み上げて、最終的に「転回形をどう練習するか」まで理解できるように構成しています。
開放弦は、フレットを一切押さえずに、弦をそのまま鳴らすことです。指板の一番上、ナットのすぐ下で鳴る音になります。標準チューニングなら、6弦から1弦まで開放で弾いたときの音はそれぞれE・A・D・G・B・Eです。この後に出てくるコードダイアグラムでは「○」という記号で表されます。
コードは、ルート(root)・3度・5度という3つの音の組み合わせでできています。たとえばCメジャーコードは、C(ルート)・E(3度)・G(5度)の3音です。この3音を弾く順番、つまりどの音を一番低く鳴らすかを変えたものが「転回形(インバージョン)」です。
| 形 | 一番低い音 | 音の並び |
|---|---|---|
| 基本形 | ルート(C) | C - E - G |
| 第1転回 | 3度(E) | E - G - C |
| 第2転回 | 5度(G) | G - C - E |
同じCコードでも、指板上には複数の場所に同じ3音(またはそのオクターブ違い)の組み合わせが存在します。この「同じコードが指板上のどこに、どんな転回形として現れるか」を体系的に整理したものが、これから説明するCAGEDシステムです。
もう1つ、この先の練習(STEP8)で出てくる「ダイアトニックコード」という言葉にも触れておきます。あるキー(調)だけを使って自然に作れる7つのコードのことで、たとえばCメジャーキーなら、C・Dm・Em・F・G・Am・Bm(♭5)の7つがダイアトニックコードです。CAGEDやコード進行の練習は、基本的にこの7つの中で行います。
CAGEDシステムを理解するには、まず指板の図(コードダイアグラム)の読み方を知っておく必要があります。縦線が弦、横線がフレットを表し、丸の中に書かれた数字は音の高さではなく使う指の番号を示します。1が人差し指、2が中指、3が薬指、4が小指です。フレット位置は丸がどの段にあるかで決まり、数字自体は指番号だけを表します。
弦の上に「✕」があればその弦は弾かずにミュートし、「○」があれば開放弦のまま鳴らします。一番上の太い横線はナット(0フレット)を表しますが、開放位置から離れた場所のコードでは太線が省略され、代わりに図の左端に「5fr」のように開始フレットの数字が書かれます。この数字があれば、その図は指板の途中から始まっていると読み取れます。太い帯状の丸みを帯びた形は「バレー」、つまり1本の指を横に寝かせて複数の弦を同時に押さえることを示します。
左:オープンのCコード / 右:バレーコードの読み方の例
CAGEDシステムは、C・A・G・E・Dという5つの開放コードの形(シェイプ)を使って、ネック全体をカバーする考え方です。下の図が、その5つの元になる開放コードです。それぞれのシェイプをバレーコードとして高いフレットへ移動させると、同じコードを指板上の異なる5つの位置で弾けるようになります(実際に移動させる例はSTEP5で見ます)。つまり、STEP2で見た「転回形」の考え方を、ネック全体に広げて体系化したものがCAGEDだとイメージするとわかりやすいです。
CAGEDの元になる5つの開放コード(すべて指板の一番上、ナットを含む位置)
5つのシェイプはネック上で連続して並んでおり、Cフォーム→Aフォーム→Gフォーム→Eフォーム→Dフォームの順に高いフレットへ移動していくと、12フレット分(1オクターブ)進んだところで再びCフォームに戻ります。まずはこの「5つの形が輪のようにつながっている」という全体像を持っておくと、STEP5・STEP6の話がつながりやすくなります。
それぞれのシェイプは、開放コードのルート音を基準に、目的の音までスライドさせる距離で位置が決まります。Aフォーム(開放のAコード)は、5弦(A弦)を何も押さえずに鳴らした音がルート音で、そのままだとAが鳴ります。これをCコードにするには、ルート音がAからCに変わるまでシェイプ全体を高いフレットへスライドさせます。下の図のように、5弦を1フレットずつたどるとA→A#→B→Cと半音ずつ上がっていくので、3フレット分スライドさせればCになります。
上:5弦の音の変化 / 下:同じAフォームを3フレット分スライドさせるとCコードになる
これは他のフォームも同じ理屈です。各フォームがベースにしている開放弦のルート音(Aフォーム=5弦=A、Gフォーム=6弦=G、Eフォーム=6弦=E、Dフォーム=4弦=D)から目的の音までの半音数が、そのままバレーするフレット数になります。
ここまでの理屈を、実際にCメジャーコードに当てはめると次のようになります。ネック上の低い位置から高い位置に向かって、Cフォーム(開放)→Aフォーム→Gフォーム→Eフォーム→Dフォームの順に並びます。
| フォーム | 開始フレット | ルート弦 |
|---|---|---|
| Cフォーム | 開放(ナット) | 5弦 |
| Aフォーム | 3fr | 5弦 |
| Gフォーム | 5fr | 6弦・1弦 |
| Eフォーム | 8fr | 6弦 |
| Dフォーム | 10fr | 4弦 |
Cメジャーの5つのCAGEDフォーム(C→A→G→E→D)
Gフォームは実際の演奏でも一番難しいとされる形で、指の使い方には他にも流派があります。まずはCフォーム→Aフォーム、Aフォーム→Gフォームのように隣り合う2つのフォームだけを繋げて、指の移動を練習するのがおすすめです。
CAGEDの考え方はネック上の5つのポジションという枠組みなので、メジャーだけでなくマイナーにも同じ理屈が使えます。ただし呼び方には少し注意点があります。実際に開放のマイナーコードとして存在するのはAm、Dm、Emの3つだけなので、マイナー版CAGEDは主にAmフォーム・Dmフォーム・Emフォームの3種類で語られることが多いです。CmフォームやGmフォームも理論上は作れますが、開放のCmコードやGmコードという元になる形が普段弾かれないため、あまり教材には出てきません。
仕組み自体はシンプルで、各フォームの中にある3度の音を半音1つ下げる(1フレット手前にずらす)だけでメジャーがマイナーになります。下の図は、Aフォームの3fr(Cメジャー)と、3度にあたる指(string2)だけを1フレット手前に動かしたCマイナーの比較です。
右側は3度にあたるstring2の音を、点線の位置(元のフレット)から1フレット手前(実線)にずらすとCマイナーになる
実用上は、Am・Dm・Emの3フォームを、メジャーと同じ5つのフレット位置(0・3・5・8・10など)に当てはめて覚えるのが現実的なアプローチです。
ここまでの内容を踏まえると、転回形の練習はCAGEDの5つのフォームを実際に指で移動する練習と言い換えられます。まずは1つのキー(Cメジャーなど)のダイアトニックコードに絞り、STEP6の図を見ながら5つのフォームの指板上の位置を地図として頭に入れます。
次に、コード進行の中で指の移動距離を最小限にする練習をします。たとえばC→Am→F→Gのような進行では、毎回同じ低いポジションに戻るのではなく、一番近いフォームへなめらかに移動します。次のコードにも含まれる共通音をアンカーにして指を残す意識を持つと、つながりが自然になります。
ベース音(最低音)を意識する練習も役立ちます。低音弦だけを弾いてSTEP2で説明したルート・3度・5度の音を耳で確認してから、フルコードを鳴らす練習をすると理解が定着します。理屈がわかったら、知っている曲のコード進行を転回形だけで弾き直してみると、指の移動が減って演奏がスムーズになるのを実感できます。